検診が普及していなかった時代には、外来を受診される方は、「夜中に何度もトイレに行くようになった」、「目方が減ってきた」、などの症状を訴えて糖尿病を発見される方が多かったのですが、最近は「症状は一切ない」と記入される方がほとんどです。その通り糖尿病の最初は症状がない、と思うのが正しいのです。
上に挙げた症状は血液の中のブドウ糖(血糖)が高くなると水を吸い寄せるので、ブドウ糖と一緒に大量の尿が出るために起こります(急性症状)。もっと重い場合はブドウ糖が利用されず、血液が酸性になり、脱水や意識の混濁から消失に至り死亡します(糖尿病昏睡)。
併しこれは殆ど1型の糖尿病に限られ、日本では患者さんの5%以下です。2型の糖尿病の方の症状は、治療が不十分の場合と慢性合併症とに限られます。まず治療不十分の場合には、重くなると1型と同じ症状が出てきますが、これは治療を始めると間もなく消えます。
強調しておきたいことは、内服薬で治療を始めると、まだ治療効果が不十分なうちに最初の症状が消えてしまい、そのレベルに安心してしまい不十分な治療を続ける危険性です。このような場合は将来慢性合併症を引き起こす原因になるので、厳重な注意が必要です。
糖尿病にだけ起こる慢性合併症には大きく分けて3種類あり網膜症、腎症、神経障害ですが、症状は網膜症、腎症とも最終段階に近づくまで出てこないので、出てきては手遅れです。定期検査で予防し適切な手段を採るのが大切です。